2023年06月09日(金)NPO教育エトセトラ研修会
活動日:2023年06月09日(金)
Webページ:2023年06月30日(金)
「生成AIの授業」をテーマとした研修会
「生成AIの授業」をテーマにした研修会で,メイン講師を務めました。 NPO法人教育エトセトラのオンライン研修会です。 参加者は自分も含めて8名でした。
講座は「模擬授業+フリーディスカッション」の形式で行いました。 まず約10分間の模擬授業を行うことで,話し合いの「話題」を提供します。 その後の約5分間で,「話題」について自由に話し合ってもらいました。
模擬授業+フリーディスカッションを,ぜんぶで「3セット」行いました。 15分×3セットですから,合計45分間の講座となりました。 「3セット」の内訳は,以下の通りです。
- 「生成AIって何?」
- 「生成AIのしくみ」
- 「生成AIと著作権」
模擬授業は,小学校5~6年生を対象として考えました。 総合的な学習の時間,または学活や道徳での実施を想定しています。 3本の授業が,そのまま1単元になるように考えました。
1セット目「生成AIって何?」
「生成AI」のイメージを,児童がつかむための授業です。 導入部では,漫画『ドラえもん』のエピソードを使いました。 展開部分では,BingChatを使って,画像を生成しました。
『ドラえもん』のエピソードは,「アニメ制作なんてわけないよ」を使いました。 アニメ映画を作ってくれる道具「アニメーカー」が登場するエピソードです。 漫画を使うことで,児童が本時の課題をスムーズに把握できると考えました。
画像生成は,教師役(山田)がBingChatを操作しました。 小学生が生成AIを直接操作することは,発達段階的にまだ早いと考えたからです。 ChatGPTが13歳以上でなければ使えない規約になっていることを考慮しました。
BingChatを使った理由は,Edgeブラウザから簡単に利用できるからです。 児童はふだんからGIGAスクール端末で,Edgeブラウザを使っています。 使い慣れたアプリ(Edgeブラウザ)から生成AIを使える事実は,児童にインパクトを与えると考えました。
2セット目「生成AIのしくみ」
「生成AIのしくみ」のイメージを,児童がつかむための授業です。 導入部では,スマホやタブレットなどの「入力予測(予測変換)」を題材にしました。 展開部分では,BingChatを使って,令状(お礼の手紙文)を生成しました。
導入で「入力予測」を扱ったのは,児童に馴染みがあるからです。 GIGAスクール端末でキーボード入力をする際,よくお世話になっている機能です。 また自分や家族のスマホやタブレットでも,よく目にする機能だからです。
「入力予測」は,児童に「生成AI」をイメージさせるために最適な題材だと考えました。 「入力予測」も「生成AI」も,「続きの言葉」を提案するからです。 「入力予測」も「生成AI」も,「蓄積した学習データ」を使って動いているからです。
手紙文の生成は,教師役(山田)がBingChatを操作しました。 1セット目の模擬授業と同じ理由からです。 5つの「トーン(気分)」のすべてで生成し,1番よさそうな結果(手紙文)を選ばせることもしました。
3セット目「生成AIと著作権」
「生成AIと著作権」のイメージを,児童がつかむための授業です。 導入部では,漫画『ドラえもん』のエピソードを使いました。 展開部分では,令和5年6月に文化庁が作成した資料を使いました。
『ドラえもん』のエピソードは,「週刊のび太」を使いました。 見本をもとに漫画を書いてくれる道具「まんが製造箱」が登場するエピソードです。 1セット目の模擬授業と同じく,児童が本時の課題をスムーズに把握できると考えました。
文化庁が作成した資料は,PDFがネット上に公開されています。 「AIと著作権」について,「開発・学習段階」と「生成・利用段階」の2つに分けて論じている点が特徴です。 スッキリしており,現行の著作権とも整合性がとれている(ように山田には感じられた)ので使いました。
模擬授業では,文化庁の資料を基に「のび太の作中での行動」を検討しました。 例えば「見本にそっくりなマンガを書かせることは,やってもいいことなのか?」を検討しました。 また「そのマンガを公開したり販売しているすることは,やってもいいことなのか?」も検討しました。
講座を終えて
講座はおおむね好評でした。 「生成AIについて知りたかったことがよくわかった」「AI検索(チャット検索)について,今までのネット検索との違いがよくわかった」などの感想が寄せられました。 また「ドラえもんの導入がすごい」「いつもながら、山田先生が使う、たとえや例がわかりやすい」などの感想もありました。
見えてきた課題点としては「児童に授業するなら,もっとわかりやすくする必要がある」です。 かなり噛み砕いた内容でしたが,「児童にはまだまだ難しいだろう」という意見がありました。 模擬授業だけではなく,実際に児童へ授業をしてみて,より「精度」を上げていく必要があるということでしょう。