ICTで意見交流をすることのメリット
原版(紙版):2023年11月19日(日)発行
Web版:2024年01月09日(火)作成
なぜ文科省は、デジタル(ICT)を使った授業を推しているのでしょうか? 「意見交流」の授業場面で考えてみました。 山田は3つのメリットがあると思います。
メリット(1)意見交流の「密度」が高まる
「挙手 → 指名」の授業
「挙手 → 指名」の授業をイメージしてみてください。 教師が「わかる人?」などと聞く → 何人かの子が挙手をする → 教師が指名する → 指名された子が発表する…というパターンの授業です。 昔からある典型的な授業だと思います。
このような「挙手 → 指名」の授業の欠点は、学級の全員が発表することが困難だということです。 1人の発表に30秒なり、1分なり、ある程度の時間が必要だからです。 45分間すべてが発表の時間なら何とかなるかもしれませんが、それでは「課題把握」「定着」「習熟・応用」などの時間が不足してしまいます。
ですから「挙手 → 指名」の授業で「学級全員の発表」を目指すのであれば、何かしらの工夫が必要になってきます。 例えば「画用紙(短冊)に意見を書かせる → 全員分を黒板に貼る → ピックアップした意見のみ口頭で発表させる」などの工夫です。 あるいは「45分間での全員発表をあきらめて、単元を通して全員発表をめざす」などの工夫(妥協?)です。
意見発表の「密度」
これがデジタル(ICT)を使った授業になると、意見発表の「密度」が上がります。 45分間で発表できる児童数が増えます。 児童1人あたりが発表する「情報量(話す言葉の量や、書く文字の量など)」も増えます。
例えば「Teamsの投稿」や「ふきだしくん」などで授業をします。 児童全員が意見を書き込む → お互いの意見を読みあう → 「いいね👍」等を付けあう → ピックアップしたい意見だけ口頭で発表させる…と授業を進めれば、意見交流の「密度」が高まっていきます。 発達段階が進んだり、タイピングやタブレット操作に慣れたりすれば、より「密度」が高まることでしょう。
メリット(2)「ふりかえり」と評価がしやすくなる
記録・蓄積は、アナログだと困難
毎時間の授業の中で、「だれがどのような意見を発表したのか?」「討論の結果、結論がどうなったのか?」を記録・蓄積していくことは困難です。 口頭での発表なら「録音や録画の機器」が必要になってきますし、ワークシートやノートでの発表なら「現物やコピーを保存しておくスペース」が必要になってきます。 学級の人数にもよりますが、記憶だけに頼るわけにもいきません。
記録・蓄積は、デジタルだと簡単
デジタル(ICT)を使った授業では、意見の記録・蓄積がとても簡単になります。 ワークシートを綴じたり、ノートのコピーを取ったりしなくても、クラウド等にそのまま記録・蓄積されます。 例えば「Teamsの投稿」や「Canvaのデジタルホワイトボード」などを使えば、自動的に保存(記録・蓄積)されます。
デジタル(ICT)で文章による意見交流を記録・蓄積しておくと、いつでも読み返すことができるようになります。 前時の意見交流でも、前単元での意見交流でも、いつでも・どこでも確認できるのです。 日付や、キーワードや、単元名や、児童名などで検索することもできるので、とても便利です。
口頭での発表や、半具体物の操作の発表でも同じです。 「ブロックを操作しながら発表された意見」や「図やグラフを指差しながら話した意見」なども、記録・蓄積が簡単にできます。 例えば「タブレットのカメラで撮影して、Teamsにアップロードする」とか「Flip(動画交流SNS)」を使うとかすればよいのです。
「ふりかえり」と評価
蓄積された記録をいつでも読み返したり見返したりできれば、「ふりかえり」や評価が簡単になります。 児童が自己評価したり、今後の学習計画を立てたりする際に役立ちます。 また教師が成績を付けたり、次時や次単元の指導計画を立てたりすることにも役立ちます。
メリット(3)さまざまな児童の実態に対応しやすくなる
手段が増える
デジタル(ICT)を使った授業では、意見発表の手段が増えます。 アプリの種類がたくさんあり、入力方法もたくさんあるからです。 教師が手段を1つ選択することもできますし、児童に手段を選択させることもできます。
個別対応がやりやすくなる
ですから様々な児童への個別対応が、やりやすくなります。 「字を書くことが困難な特性をもつ児童」「文を考えることが苦手な児童」「大勢の前では緊張して話せない児童」などにも対応しやすいのです。 支援学級の児童はもちろん、通常学級の児童も、「自分に合った学習」に取り組みやすくなるのです。