http://www.yamadarn.com/ コラム「学校でのICT活用について考える」

学校でのICT活用や、GIGAスクール構想についての覚書(おぼえがき)です。 勤務校で書いた自己研修通信から再構成しました。 内容の一部は、インスタグラムにも投稿しています。

自習できる子と、自己管理できる子

原版(紙版):2023年11月22日(水)発行

Web版:2024年01月09日(火)作成

言葉の定義

ほかの先生方と授業について話をする時は、「言葉の定義」が大切です。 「言葉の定義」が違えば、話がうまく噛み合わないからです。 例えば「教える」という言葉を、A先生は「説明する」の意味で使っているのに、B先生が「指導・支援・場の設定など全部」の意味で使っているような場合です。

A先生の「教える」
「説明する」ことだけ
B先生の「教える」
「指導する」「支援する」「場を設定する」など、授業中に教師が働きかけることすべて

「主体的」の定義

最近よく聞く言葉の中では、「主体的」がその筆頭でしょう。 人によって「言葉の定義」が異なるように思います。 「自発的」の意味で使っている先生、「自主的」の意味で使っている先生、「自発的+自主的」の意味で使っている先生、「自主的でも自発的でもない別の意味」で使っている先生など、さまざまいらっしゃるようです。

自発的
自らの中からモチベーションが生まれて行動を開始すること
他者に言われて行動を開始するのではない
自主的
自分で内容や手段を決めて行うこと
過去の経験を生かしたり、新しく調べたり、その場で教わったりしながら、自己決定する

そこで今回は「主体的」という言葉を、あえて「別の言葉」に置き換えてみました。 その方がイメージしやすくなり、語りやすくなる(通信を書きやすくなる)と考えたからです。 その上で,デジタル(ICT)を使った授業を考えていきます。

主体的に学べる子→自習できる子

「主体的に学べる子」を、あえて「自習できる子」という言葉に置き換えてみます。 「教師がいなくても自分1人で個別学習できる子」または「教師がいなくても自分たちで協働学習できる子」といったイメージです。 「他の学級の研究授業で、教師が不在の場合」や、「複式授業のように教師が監督している場合」や、「自宅や友人宅や図書館などで学習する場合」など様々なケースが考えられます。

「自習できる子」のイメージ
教師がいなくても、自分1人で個別学習できる子
教師がいなくても、自分たちで協働学習できる子

もちろん児童の発達段階や、これまでの経験(慣れ)によって、「どのレベルの自習」になるか変わってきます。 初期段階では「教師が配布したプリントに取り組む」「教科書やドリルの、教師が指定したページを取り組む」などの自習になるでしょう。 段階が進むと「自分で課題を見つけて取り組む」「自分で学習計画を立てて、自由な進度で取り組む」「自分たちで討論する」などの自習に、少しずつなっていくと思います。

今はGIGA時代ですから、「主体的に学べる子」→「タブレットやクラウドを使って自習できる子」と置き換えてしまった方が、より分かりやすくなるかもしれません。 GIGA時代の授業は、デジタル(ICT)が前提だからです。 より具体的には「動画配信サイト」「AIドリル」などで個別学習ができる子や、「Teams」「Flip」「Canva」などで協働学習ができる子を育ていくことになります。

「タブレットやクラウドを使って自習できる子」のイメージ
「動画配信サイト」「AIドリル」などを使って、自分1人で個別学習できる子
「Teams」「Flip」「Canva」などを使って、自分たちで協働学習できる子

いずれにせよ「自習できる子」を育てるためには、児童の実態に応じた指導が必要です。 「自習のやり方を1つ教える」→「身に付くまで、くり返し教える」→「身に付いたことを褒める」→「自習のやり方を更に1つ教える」…というループになるかと思います。 「最初は教師主導で、児童の成長に応じて少しずつ手放していくイメージ」です。

主体的に学べる子→自己管理できる子

次に「主体的に学べる子」を、「自己管理できる子」という言葉に置き換えてみましょう。 「目標達成のために、自分で思考・感情・行動を管理できる子」または「目標達成のために、自分で計画を立てたり修正したりしながら、最後まで取り組める子」みたいなイメージです。 あるいは「自ら学習を調整すること」と「粘り強く学習に取り組むこと」の、両方ができる子のイメージです。

「自己管理できる子」のイメージ
目標達成のために、自分で思考・感情・行動を管理できる子
目標達成のために、自分で計画を立てたり修正したりしながら、最後まで取り組める子

今はGIGA時代ですから、「主体的に学べる子」→「タブレットやクラウドを自己管理できる子」と置き換えてしまってもよいかもしれません。 「ネットいじめ・ゲーム依存症・架空請求などのトラブルを避け、デジタル(ICT)で効率よく学習を進められる子」のようなイメージです。 いわゆる「情報モラル」や「デジタルシチズンシップ(高度情報化社会に参画する能力)」も身についている子のイメージです。

「タブレットやクラウドを自己管理できる子」のイメージ
ネットいじめ・ゲーム依存症・架空請求などのトラブルを避けることができる子
デジタル(ICT)で効率よく学習を進められる子

「自己管理できる子」を育てるためにも、児童の実態に応じた指導が必要です。 発達段階や経験(慣れ)はもちろん、「発達特性」によっても指導が変わってきます。 「過集中しやすい(のめり込みやすい)子」「易疲労(神経的に疲れやすい)の子」「気が散りやすい子」「感情を爆発させやすい子」「見通しが持てないと不安を感じる子」など、個別の支援や、合理的な配慮を必要とする子もいるからです。

特別支援学級では「タブレットやクラウドを自己管理できる子」を育てることが、大きな課題となります。 「発達特性」によって困難が生じる子が多いからです。 保護者も担任も、思わず「ICTを取り上げてしまいたくなる」ほど、頻繁にトラブルが起きます。

もちろん「発達特性」によって困難が生じる子であっても、「タブレットやクラウドを自己管理できる子」に育てていかなければ、将来の自立につながりません。 ICTを取り上げればトラブルを避けることができますが、同時に「成長の機会」も奪ってしまいます。 どのような個別の支援や、どのような合理的な配慮をしていけばよいのか、山田はいつも悩んでいます。