http://www.yamadarn.com/ コラム「学校でのICT活用について考える」

学校でのICT活用や、GIGAスクール構想についての覚書(おぼえがき)です。 勤務校で書いた自己研修通信から再構成しました。 内容の一部は、インスタグラムにも投稿しています。

クラウドは「情報の銀行」である

「クラウド」とは何でしょうか? よく聞くICT用語ですが、しっかりしたイメージを持っている人は少数派でしょう。 「ネット(インターネット)」だとか、「コンピュータ」だとか、ぼんやりとしたイメージしかない人が圧倒的多数派だと思います。

原版(紙版):2023年12月09日(土)発行

Web版:2025年01月04日(土)作成

「情報の銀行」だとイメージしよう

「クラウド」をしっかりイメージするなら、「銀行」に置き換えるのが1番わかりやすいと思います。 「銀行」が「利用者のお金を預かるところ」であるように、「クラウド」は「利用者の情報を預かるところ」なのです。 「給料の振込」や「ATMでの引出」を経験したことがある社会人にとっては、「銀行」が1番イメージしやすいと思います。

「情報の銀行」ですから、「クラウド」には様々な「情報」が出入りします。 「銀行」で正しく手続きをすれば、「給料の振込」や「水道光熱費の引き落とし」などができることと同じです。 「クラウド」も正しく手続きをすれば、「メールの送受信」や「文書の共有」などができるようになります。

Teamsも「情報の銀行」、ロイロも「情報の銀行」

「銀行」も、「クラウド」も、たくさんの種類があります。 「銀行」には「ゆうちょ銀行」「三井住友銀行」「三菱UFJ銀行」などがあります。 同じように「クラウド」には「LINE」や「instagarm」や「Gmail」などがあります。

本校で使われている「クラウド」の代表格としては、「Teams」や「Qubena」や「ロイロノート」が挙げられるでしょう。 ほかに授業用の「クラウド」としては、「まなびポケット」「Kahoot!」「Canva」「ふきだしくん」なども使われています。 校務用の「クラウド」としては、「Googleドライブ」「Google Forms」「Microsft Forms」などが挙げられます。

それぞれの「クラウド」ごとに、得手・不得手があります。 これは同じ「銀行」であっても、「都市銀行」と「地方銀行」では得手・不得手が異なっていることと似ています。 授業や校務の内容に合わせて、適切な「クラウド」を選んでいく必要があります。

クラウドは、全国どこからでも「情報」を引き出せる

「クラウド」の長所の1つは、「全国どこからでも情報を引き出せること」です。 これは「銀行に預けてあるお金」が、全国各地のATMなどから「引き出せること」と同じです。 「クラウドに預けてある情報」は、全国のどこからでもコンピュータ(スマホ・タブレット・パソコンなど)を通して「引き出せる」のです。

例えば「学校」の校務パソコンで作成した文書は、「家庭」の私物パソコンや、「外出先」に持参した私物スマホからでも、開くことができます。 「クラウド」にさえ保存しておけば、「学校」の仕事の続きを、「家庭」や「外出先」ですぐ進めることができるのです。 運用規定(セキュリティ方針)を改訂するまで「クラウド」へ文書を保存できない自治体もありますが、「技術的には可能」です。

「クラウド」が学校でも当たり前に使われるようになれば、教師の働き方も変わってきます。 例えば吹雪で臨休になった場合なら、無理に出勤しなくても「家庭」で仕事ができます。 外勤や出張などの出先から、打ち合わせシートを読み書きすることだってできます。

「銀行」に預けた方が、「職場の金庫」や「家庭のたんす」よりも安全

「クラウド」のもう1つの長所は、「情報を安全に保管できること」です。 これは「職場」や「自宅」に「お金」を置いておくよりも、「銀行」に預けた方が安全であることと同じです。 パソコンや共用サーバーに保管しておくよりも、「クラウド」の方が安全です。

例えば地震・津波・洪水・火事などを考えてみてください。 「職場」や「自宅」が、完全に失われてしまうような災害です。 頻繁に起きることではありませんが、日本列島の自然環境では、いつ・どこに起こっても不思議ではありません。

もしも「職場」や「自宅」が災害で完全に失われてしまったとしても、「クラウド」に保管しておけば「情報」は無事です。 「銀行」に預けた「お金」が無事であることと同じです。 「クラウド」も「銀行」も離れた場所にあるので、「職場」や「自宅」と同時に失われる可能性は低いです。

もしも校舎が災害で完全に失われてしまったとしても、「クラウド」ならば「情報」を守れます。 校舎内の保管場所(共用サーバーなど)では守り切れませんが、離れた場所にある「クラウド」ならば守れます。 提案文書はもちろん、指導要録などの大切な情報も、運用規定(セキュリティ方針)を改訂して「クラウド」に保管すべきなのです。

「多額の現金」を持ち歩くより、「口座振込」の方が安全

いまだに「個人情報が入ったUSBメモリを紛失した」という報道が流れることがあります。 「飲食店で酔っぱらったら、カバンごとUSBメモリを紛失した」とか「スーパーやパチンコに寄ったら、車上あらしでカバンごとUSBメモリを盗まれた」などの報道です。 教員だけではなく、役場職員や医療関係者なども結構「やらかして」います。

「クラウド」が「情報の銀行」ならば、USBメモリは「情報の茶封筒」です。 個人情報を持ち歩く「入れ物」としては、極めて頼りないものです。 茶封筒で多額の現金を持ち歩いたり、そのまま酔っぱらったりすることをイメージしてみれば、どれだけ危険な行為か察していただけるでしょうか。

「USBメモリ(情報の茶封筒)」を使うぐらいなら、「クラウド(情報の銀行)」で「情報」をやり取りする方が安全です。 多額の現金を持ち悪くより、「銀行」で振り込んだ方が安全なことと同じです。 「クラウドは危険」という古い常識に囚われず、今すぐ「クラウド」での「情報」のやり取りに切り替えるべきなのです。

文科省も「クラウド」の利用を推奨しています。 詳しくは「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」などの文書を確認してみてください。 文科省の推奨にも関わらず、いまだに「クラウド」の利用を制限している自治体があることが残念です。