http://www.yamadarn.com/ コラム「学校でのICT活用について考える」

学校でのICT活用や、GIGAスクール構想についての覚書(おぼえがき)です。 勤務校で書いた自己研修通信から再構成しました。 内容の一部は、インスタグラムにも投稿しています。

特別な支援を要する児童とICT「環境調整」

原版(紙版):2023年12月18日(月)発行

Web版:2024年01月06日(土)作成

「環境」がよくなれば「困難」は小さくなる

誤解を恐れず大雑把にあらわすと、以下の「式」になります。 「なぜ特別な支援を要する子には「困難」が生じてしまうのか?」をあらわす「式」です。 あるいは「なぜ特別な支援を要する子に「環境調整」などが必要なのか?」をあらわす「式」です。

生まれ持った「特性」は、あとから変えることができません。 「気が散りやすい」とか「特定の行動パターンにこだわる」とか「指先の繊細な動きが苦手」などの「特性」です。 「少数派(マイノリティ)」ではありますが、人類の「多様性(正常な変異)」のあらわれです。

ですが「環境」ならば、あとから変えることができます。 学校生活で例を挙げれば、「担任が授業のやり方を変えること」や「担任が学級経営のやり方を変えること」ならばできます。 最終手段かもしれませんが「在籍変更」も検討する余地があるでしょう。

その子の「困難」を小さくするには「環境」を変えるしかありません。 「特性」が変えられないのですから、「環境」の方を変えるしかないのです。 もちろん人手も予算も時間も限られていますから、実際には「できる限りで変えていく」ということになるでしょう。

多くの場合で、ICTは「環境」を変えることに役立ちます。 教師が授業を変えたり、本人が学び方を変えたりすることに役立つのです。 例えば以下の通りです。

「できる」と「できない」には「中間」がある

特別な支援を要する子の「できる・できない」は、「白黒2色」ではありません。 「グラデーション」です。 「できる」と「できない」の「中間」が、ものすごく広いのです。

パッと見で分かりやすいのは「少しならできる」という子です。 例えば「待つことが苦手だけど、短時間なら待てる」とか「人ごみは苦手だけど、短時間ならいられる」などの子です。 こういう子は「何をどれぐらいまで挑戦させるか?」の判断がつきやすいので、指導がしやすいです。

ですが「定型の子と同じだけできるけど、ものすごく疲れる」という子もいます。 パッと見では「平気そう」でも、どんどんストレスや疲労が溜まっていく子です。 こういう子は「何をどれぐらいまで挑戦させるか?」の判断がつきづらいので、指導が難しいです。

また「日によって変わる」とか「興味のある・なしで変わる」という子もいます。 「昨日の疲労が残っているので、今日はできない」とか「理科の授業ならできるけど、社会の授業ならできない」といったタイプです。 この子たちへの指導には、微妙な匙加減が必要です。

このような「中間」を意識しないまま指導してしまうと、児童の心が離れていきます。 教師や学校への信頼が下がったり、学習意欲が失われたりします。 何度も続けば「暴れる」「教室を飛び出す」「不登校になる」などの不適切行動も出てくるでしょう。

GIGAスクール端末(タブレット)などのICTは、「中間」の子にとって、大きな助けになり得ます。 従来のアナログ(紙や鉛筆)以外にも、学習の選択肢が増えるからです。 自分にとって「やりやすい方法」や「疲れづらい方法」を選べることは大きいです。