http://www.yamadarn.com/ コラム「学校でのICT活用について考える」

学校でのICT活用や、GIGAスクール構想についての覚書(おぼえがき)です。 勤務校で書いた自己研修通信から再構成しました。 内容の一部は、インスタグラムにも投稿しています。

PISA2022と、ICTを使った授業

原版(紙版):2024年01月25日(木)発行

Web版:2025年01月03日(金)作成

PISA2022の調査結果

今回は「PISA2022」の調査結果を読んで、個人的に気になったことを書いてみます。 PISAは、OECD(経済協力開発機構)が3年に1度実施している学習到達度調査です。 令和5年(2023年)12月5日に、令和4年(2022年)の調査結果が、国立教育政策研究所から発表されました。

日本は、授業でのICT利用頻度が低い

各教科の授業でのICT利用頻度が、日本はOECD諸国に比べて低い…という調査結果でした。 国語や算数みたいな「ふつうの教科」でのICT利用です。 PISAの調査対象は15歳の高校生ですが、小学校の段階から少しずつ積み重ねていく必要があると思います。

ICTを使った「ふつうの教科」の授業は、「協働的な学び」と「個別最適な学び」のどちらにも役立ちます。 ですからICTが得意な教師だけではなく、すべての教師がICTを使った授業ができるよう、校内研修などの体制を整えた方がよいとも思います。 中標津町の事情で言えば、まずはTeamsとロイロノートの活用からでしょう。

協働的な学びとICT
他の児童や教師と協力しながら学べる
自分の考えを表現することを学べる
他者と意見を交わすことを学べる
例えば、オンラインによるグループワークや,リアルでのプレゼンなどの活動
個別最適な学びとICT
自分の学習進度に合わせて学べる
自分の特性に合った手段で学べる
興味関心に合わせて,探求的に学べる
例えば、AIドリルでの学習、動画サイトでの学習、検索サイトでの学習など

日本は、ICTを使った探究型学習の頻度が低い

「ICTを用いた探求型の教育の頻度」の指標が、日本はOECD平均を下回っている…という調査結果でした。 生徒がICTを使って「情報を集める」➡「集めた情報を記録する」➡「記録した情報を分析する」➡「分析した情報を報告する」などの学習活動をする頻度です。 ICTを使った「習得型」や「活用型」の授業だけではなく、ICTを使った「探求型」の授業を、もっとたくさん実施する必要があるかと思います。

日本は、エラー解決やプログラミングについての「自信」が低い

「デジタル・コンピテンシーに対する自己効力感」という質問項目について、日本はOECD平均を下回っていました。 「コンピテンシー」という言葉は分かりづらいですが、「成果を発揮する行動特性」などと訳されています。 「ICTスキルに対する自信(自負心?)」とか、「目の前の課題をICTで解決しようとする意欲」みたいな感じではないかと考えています。

日本は、情報の「ウソ・ホント」を確かめようとする意識が高い

「インターネット上の情報に対する考え方・実践」の質問項目が、OECD平均を上回っている調査結果が出ていました。 「情報を検索したときは、様々な情報源を比較する」「SNSで拡散する前に、その情報の正しさを確認する」などができているようです。 いわゆる「情報モラル教育」が上手くいっているということでしょうか。

情報の「ウソ・ホント(真贋)」を確かめようという意識は、これからの時代、より一層必要になってきます。 善悪両方に使える「生成AI」が、爆発的に進化しているからです。 「フェイクニュース」の危険が、より一層高まっているのです。

SNSやゲームに費やす時間が一定時間を超えると、学力が低下する

平日に3時間以上をSNSやゲームに費やすと、学力が低下する…という調査結果でした。 日本も世界も、どちらも学力が低下する結果が出たそうです。 ここでいう「学力」とは、PISAで調査している「数学的リテラシー」「読解力」「科学的リテラシー」の3つのことです。 なお日本の場合、幸いなことに「平日に3時間以上」と回答した生徒の割合が、OECD諸国の平均よりも低くなっていました。

日本の学校は、ICTを利用しやすさが高い。しかし回線速度が…

「学校でのICTリソースの利用のしやすさ」の指標が、日本は5位で、OECD平均よりも高い…という調査結果が出ていました。 ただし「学校のインターネットは十分速い」の質問項目が低くなっていました。 本校も「回線速度が遅いので、使いたいけど使えないアプリ」などが多々ありますので、納得の調査結果かもしれません。

※リソース=「資源」。ハードやソフトなどのこと